相続の基本

法定相続情報証明制度

 法定相続情報証明制度とは相続人が登記所に対し、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係の書類を始めとする必要な書類及び一覧図を提出することにより、登記官が上記の内容を確認し、認証文付きの一覧図の写しを交付するものです。

 これにより、登記官が内容を確認して交付された一覧図の写しにより法定相続人が一目瞭然となりました。

 つまり、これが発行されれば、その法定相続人は間違いがないという証明でもあるし、銀行や法務局での手続き(法務局での相続登記は専門家でなくてもできます。この法定相続情報があれば。)はスムーズに行えます。

 これがなかったときは、銀行や法務局へ行けば、大量の戸籍や住民票を提出して、それぞれがすべて整っているかをチェックしなけれなならず、莫大な時間がかかっていました。この制度が出来てから、この紙一枚提出するだけで、証明することが出来るようになりました。

 

【法定相続情報証明制度創設の意味】

  法定相続情報証明制度は、所有者不明土地問題や空き家問題の大きな一因とされている相続登記の未了状態を抑制し、相続登記を促進するために創設されたものです。

 こういう背景があって、法務省や法務局は相続登記に対して難しいことを言わないようになり、相続登記を促進しているので、自分でも出来るようにお手伝いしてくれます。

 

【不動産登記の申請以外の利用】

 一覧図の写しの提供を持って戸除籍謄抄本の提供に代えることが出来ることを法定しているものには、本来の目的である不動産登記手続きや相続税の申告手続きがありますが、その他の手続きについては提出先の任意です。

 ただ、市区町村役場や銀行、郵便局に利用促進のポスターが張られているところを見ると、被相続人名義の預貯金の解約手続きや株式の相続手続きなど、様々な場面で活用されています。

 

法定相続情報一覧図

 法定相続情報証明制度を利用するには、申出者である相続人が自分で「法定相続情報一覧図」を作成しなけれななりません。といっても、私たち行政書士が委任による代理人として申出の手続きを行います。

(なお、代理人については、行政書士・弁護士・司法書士・土地家屋調査士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士に依頼することができます) 

 一覧図は、家系図のような表です。

 以下のひな形のように被相続人と相続人の氏名、生年月日、住所、出生日を書きます。

 被相続人に関しては、本籍地と死亡年月日の記載も必要です。

 

 法定相続人は、被相続人の亡くなってから生まれるまでの全ての戸籍謄本を集めることが必要です。

 相続人になる可能性のある人は配偶者、子、親、兄弟姉妹でしょう。これ以外には、養子縁組や、認知した子も相続人となります。

 

 相続人の中にすでに亡くなっている人がいると、代襲相続が発生してその子供に相続権が移ります。

 この場合、孫などの代襲相続人については記載しますが、子供などの被代襲者の名前は記載が不要です。

 また、相続廃除を受けた人は記載する必要がありません。

 

 家督相続を受けている場合は、続柄に家督相続人である旨を併記します。

 

 

相続関係説明図と法定相続情報一覧図との違い

 法定相続情報一覧図は、法務局で認証を受ければ戸籍謄本の代わりに提出することができるものです。

 相続関係説明図は不動産の相続登記との関係でのみ使用するのに対して、法定相続情報一覧図相続手続き全般で使用することができます。

 

 『相続と終活の相談室 オフィスなかいえ』では、相続手続き全般で使用するので、法定相続情報一覧図を使っています。

 

 法定相続情報一覧図により、銀行の預貯金の解約、相続登記、相続税の申告等で使うことができます。

 

法定相続情報証明制度新設の背景

 法定相続証明制度が新設された背景には、所有者が判明しない不動産の増加が挙げられます。このような所有者が不明という問題により、公共事業の用地取得や空き家の放置、遊休農地の発生、農地集約化の妨げ、森林の適正な管理が出来ないなど、様々な問題が生じているのです。

 遺産分割や相続登記がなされないうちに相続人に更に相続が発生し、それが何代にもわたることで、解決が一層難しくなっているケースも少なくありません。

 このような背景から、相続登記を促進するために、「法定相続情報証明制度」が新設されたのです。

 

 法定相続情報証明制度は、相続登記手続きに限らず、相続に起因する「その他の手続き」も使えるように想定されています。

 一覧図の写しの提供を持って戸籍・除籍/謄本・抄本、の提供に代えることが出来ることを認めているのが、銀行の預貯金の解約手続きや株式の相続手続き等、いろんな場面で活用されています。

 

法定相続情報証明制度を利用できる場面

 法定相続情報を利用して、以下の手続きができます。

 

 法務局での不動産の名義変更

 

 銀行、郵便局での預貯金の払戻し、名義変更

 

 株式、投資信託などの名義変更

 

 相続した自動車や船の名義変更

 

 税務署での相続税申告、納税

 

申出の方法

 法定相続情報一覧図を作成して、他の必要書類を揃えたら、管轄の法務局に提出しましょう。

 管轄の法務局は、以下から選べるので、最も便利な法務局を利用できます。

 

 被相続人の死亡時の本籍地

 

 被相続人の最後の住所地

 

 申出人の住所地

 

 被相続人名義の不動産の所在地

 

 持参だけでなく、郵送でも申出が可能です。

 また、申出には費用がかかりません。

 

 申出をすると、2,3日から1週間くらいで法務局が認証印を押した「法定相続情報証明書」を交付してくれます。

 いろいろな手続で使えるので、必要な枚数を申請しましょう。

 証明書が交付されると、申出時に提出した戸籍謄本等は返還されます。(申出人の身分を確認できる書類以外)

 

(2021/10/7)更新

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