まず任意後見制度の概要ですが、任意後見は、本人が任意後見契約で受任者を委託しておきます。そして将来、本人が認知症などで判断能力が衰えた場合、契約で付与された範囲内での財産管理や法律行為を裁判所から選任される監督人による監督のもとで任意後見人が行うものです(任意後見契約に関する法律 第2条1項)。
任意後見契約の当事者である本人は、契約時においては判断能力が必要です。その為、その時点で判断能力を欠く人は、任意後見ではなく法定後見を 利用することになります。
もう一方の契約当事者である任意後見人(契約の時点では任意後見受任者)は、契約によって付与された範囲で、本人の生活、療養看護及び財産管理など本人を代理して行います。
任意後見契約は、委任者とその家族(又は友人・知人)との間で結ばれることが多く、専門職も含め、それまで面識のなかった他人に財産管理をゆだねることへの心理的抵抗感が、なお根強いことがうかがわれる。
しかし、親族でない者との間で任意後見を締結する需要は、少ないながらも確実に存在している。
たとえば、
委任者に親族がいない場合
親族のなかに誰一人として信頼する人がいない場合
親族に対して迷惑をかけたくないと考えている場合
親族間の対立が激しく、そのうちの一人を受任者とすると争いをこじらせてしまいかねない場合
が考えれれます。
※任意後見監督人
任意後見監督人は、契約の当事者ではありません。任意後見契約の登記後、本人の判断能力が不十分になったと任意後見人から報告を受けた裁判所は、任意後見監督人を選任し、その任意後見人の事務を監督人に監督させます。その監督の内容を家庭裁判所に定期的に報告することで、任意後見人の不正回避を図っています。
裁判所は任意後見監督人を通して任意後見人を監督する必要があるため、裁判所から任意後見監督人が選任されない間は、任意後見契約は発行されません。裁判所は、任意後見監督人を通して間接的に任意後見人をチェックしているともいえるでしょう。
ただし、任意後見監督人については、その専任を申し立てる側から、候補者の提示が行われることもありますが、裁判所は、監督の実効性を担保するために、申立人と利害関係のない第三者専門職を選任しているのです。
①判断能力が十分なときに、将来判断能力が低下したときのために、備える契約です。(お金の管理や法的な手続に関して)
②本人が自分で、将来後見人になる人を選ぶことができます。
③将来代理してもらう内容も自由に決めることが出来きます。
④必ず公正証書によって作成しなければなりません。(任意後見契約に関する法律 第3条)
⑤判断能力が低下せずに委任者が亡くなった場合、この契約は使わないことになります。
任意後見の趣旨は、本人の意思を尊重・自己決定の尊重です。⇔それに対して、法定後見では、自己の意思、自己の決定は全く入っていません。
委任者:支援をお願いする人(本説明では「本人」といいます)
任意後見受任者:支援をする人(受任にの時点で)
任意後見人:支援をする人(任意後見監督人だ選任された後)
任意後見監督人:任意後見人の事務を監督する人(=任意後見人を監視し、定期的に家庭裁判所に報告する人)
代理権を用いた法的サービスが業務の中心で、介護のような直接的な事実行為は業務の範囲ではありません。任意後見は、「任意後見契約に関する法律」(以下「任意後見法」といいます。)に定められていて、一般法の民法を一部準用しています。
任意後見契約の際に、契約の発効前に必要な業務や、契約終了後に必要な業務を任意後見に付随する業務、あるいは任意後見を補完する業務として下記の契約を加えることができます。
任意後見契約に付随する、あるいは任意後見を補完する契約として、
見守り契約
財産管理委任契約
死後事務委任契約
家族信託契約
などがあります。
判断能力がある時期 | 判断能力が低下した時期 | 死亡 | |
見守り契約 財産管理契約 |
民法上の委任に基づき見守りや財産管理を行う | 終了 | 終了 |
任意後見契約 | 未発行 | 家庭裁判所の審判で監督人が選任され契約が発行 | 終了 |
死後事務委任 | 未発行 | 未発行 | 死後事務をおこなう |
家族信託 | 全ての期間を通して効力を生じさせることが可能 | 全ての期間を通して効力を生じさせることが可能 | 全ての期間を通して効力を生じさせることが可能 |
①移行型(任意後見契約) 本人の体力も判断能力もしっかりしている間に契約を結んでおき、将来判断能力が不十分になったときに任意後見契約のよる効力を発生させるものです。
財産管理契約(=委任契約)+任意後見契約
任意後見契約と同時に、同じ当事者間で民法上の委任による任意代理(財産管理委任契約)を締結しておきます。そうすることで、契約の時点から任意後見契約が発行するまでの期間も、財産管理や身上監護(保護)の事務を受任者に依頼することができます。
判断能力はしっかりしているしているけど、体力の衰えなどで金融機関へ行くのが大変な人などです。その上で、本人の判断能力が低下したら、任意後見契約を発行させて任意後見監督人の監督の下で、任意後見人としての業務がスタートします。
この契約が任意後見契約としては一番多い形態です。
②即効型(任意後見契約) 任意後見契約の締結後、直ちに任意後見監督人の選任の申立てを行う形式です。
任意後見契約(いきなり発行)
本人の判断能力が低下したからこそ任意後見監督人の選任の申立てを行い、任意後見契約を発行させるのですが、ほぼ同時期に、任意後見契約を提携するだけの判断能力が本人にあるというのは矛盾しているように思えますが、軽度の痴呆・知的障害・精神障害等の状態にある補助制度の対象者(場合によっては保佐制度の対象者)でも、契約締結の時点において意思能力を有する限り、任意後見契約を締結することが可能であるとされています。
しかし、たとえ軽度であったとしても、判断能力の低下している本人と任意後見契約を締結してよいのかやはり疑問があるところではありますが、最終的にチェックするのは公証人であり、日本公証人連合会の証書の作成と文例(家事関係編)には即効型の任意後見契約がのっていますので、これを見る限り、公証人は消極的ではないようです。
③将来型(任意後見契約) 判断能力の低下する前における財産管理や身上監護事務を行うことを内容とする任意代理の委任契約を締結せずに、任意後見契約のみを締結し、本人の判断能力の低下後に任意後見人のサポートを受けることのみを契約内容とするものです。
任意後見契約(財産管理契約を結ばない+すぐに契約を発行させるわけではない場合を指します)
普通に考えると、この形態が一般的ではあるが、任意後見契約としては多くはないです。
類型 | 本人の状況による内容の違い | 発行までの期間 | 問題点 |
将来型 |
判断能力はしっかりしている。 しかし、将来の判断能力の低下に備え、念のために事前に契約する。 |
将来、本人の判断能力が不十分になると家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらい任意後見がスタート。 |
待機状態が長い場合、受任者が第三者であると本人の状態がわからなくなる可能性もある。 本人も受任者のことを忘れる可能性がる。 |
移行型 |
判断能力はしっかりしている。 しかし、体力や体調の問題で、金融機関に行くことが困難な場合などに財産管理等の委任契約をする。 |
財産管理中に本人の判断能力が不十分になったら財産管理契約を終了し、家族裁判所に任意後見監督人を選任してもらい任意後見がスタート。 |
本人の判断能力が低下しても、出金等に困らないため任意後見監督人の選任を申立てないことがあり得る。 任意後見監督人のチェックがない間に受任者が権利の乱用をする可能性がある。 |
即効型 |
判断能力が低下しつつある。 今の間に契約を締結。 |
契約締結後すぐに家庭裁判所に任意後見監督人を申立てて任意後見がスタート。 |
本人に契約締結能力があるのかが不明確。 受任者が親族でない場合は、信頼関係の構築の時間がない。 |
例)80代一人暮らしの女性
家族・親戚が近くにいないので将来が不安。
現在は、お金の管理も自分でしてお元気であるが、今後が不安なので行政書士といくつかの契約をしている。
①見守りサービス契約
②財産管理等委任契約
③任意後見契約
④死後事務委任契約
⑤遺言契約
⑥遺言執行契約
⑦家族信託契約
以上の7つの契約を行政書士として行っています。
80代で一人暮らしとなると、終活の一つとして見守りが必要です。具合が悪く、誰かに助けを求めようとしても動けなければ大変なことになります。
この場合、1ヶ月に1回という見守りではなく、毎日特定の時間に電話が鳴り、それをとることで本人の無事が確認できるような自動電話型見守りサービスがベストです。
終活において、財産管理はもっとも大切な行為です。
本人は、頭はしっかりしているけど、体が不自由になり、自分で銀行に行けなくなった場合、受任者が財産管理委任契約書を持って、銀行などへ行き、本人の代わりにお金を引き出したりします。
認知症などで判断能力が低下してきた場合、任意後見監督人選任の申し立て手続きを家庭裁判所にします。その後、任意後見人を監督する監督人が選ばれ、任意後見監督人の下で、財産管理を行います。
※なぜ任意後見監督人が就くのか
ご本人の判断能力が低下しているため、自分で任意後見人を監視できないからです。
亡くなった場合、任意後見人としての業務は本人の死亡により終了します。
生前に結んでいた死後事務委任契約に基づき、葬儀の手配、納骨、病院への費用の支払い、施設の退去手続きなどをします。
相続人がいる、いないに関わらず本人には希望があるはずです。本人の財産をどこに、どう配分するかを決めるのは本人です。本人の希望通りにさせてあげましょう。
生前に残していた遺言内容を実現する契約です。
遺言を残していたとしても、その通り実行されるとは限りません。
遺言執行契約で、その通り実行するように契約を結ぶのです。
どちらかが先に亡くなってからでは対応ができない場合があります。その時はかなり高齢だと思うので、新たに契約ををすることが難しいからです。
①の見守りサービス契約
④の死後事務委任契約
⑤の遺言契約
⑥の遺言執行契約
をお互いの任意後見契約と一緒に結ぶことを忘れないようにしましょう。
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