家族信託 コラム

日本の成年後見制度は差別的である

 皆さんは、日本の成年後見制度をどれだけ理解しているでしょうか。

 認知症になったときにつける制度?と理解されていらっしゃるのではないでしょうか。

 この理解は間違っていません。広辞苑によれば、「認知症や知的障害・精神障害などにより判断能力が不十分な成人に代わり、代理人が生活と財産を保護する制度。家庭裁判所が代理人を選任する法定後見と、将来に備え本人が選任する任意後見とがある。2000年禁治産制度に代わり導入。」ということです。

 文書を読む限り何の問題も無いように思えます。

 しかし、この制度について、昨年9月、国連から勧告を受けたのです。

 

日本の成年後見制度は差別的である

国連の意見は次の通りです。

懸念点

 民法の下で、障がい者、特に知的障害のある人の法的能力の制限を許可し、代替の意思決定システムを永続させることにより、障がい者が法の前に平等に認められる権利を否定する法的規定。

勧告

(1)代理意思決定制度を廃止するために、すべての差別的な法的規定及び政策を廃止し、すべての障がい者が法の前に平等に認められる権利を保障するために民法を改正すること。

(2)すべての障がい者が必要とする支援のレベルや形態に関わらず、すべての障がい者の自律性、意志及び選好を尊重する、支援された意思決定のメカニズムを確立すること。

 

 基本的人権の尊重を柱とする「日本国憲法」を民主主義国家の柱としていた日本ですが、今回の国連の勧告は由々しき事態です。自分たちでは平等だと思っていたら、「差別的だから、民法を改正しろ」と言われたのですから。

 NHKの「クローズアップ現代」でも昨年報道されていましたが、番組では「成年後見制度」全般について差別的だという構成で報道されていました。

 もともと、成年後見制度は、介護保険制度と共に始まった制度です。

 本来は、認知症などで判断能力が低下した高齢者の財産が、誰かに勝手に使い込まれたり、だまされて奪われたりしないようにすることを目的とした制度です。

 そのため、介護保険制度と成年後見制度は、高齢化社会を支える「車の両輪」と言われています。

 ところが、そのルールを障がい者にも適用してしまったのです。

 成年後見制度の考え方は、「財産を保護する」とありましたが、それは今では「財産を減らさない」ということに代わってしまっているのです。

 そこには、そのお金をどう被後見人のために有効に使うかという議論はなく、出費が医療費・介護費に限定されているかどうかがチェックされている状態です。

 ですから、権利とか平等とかという言葉からはかけ離れた制度になってしまっているのです。

 2000年に制度の運用が始まったときには、親族が後見人になることが多かった制度です。近年では、財産の使い込みという問題があったということで、弁護士や司法書士などの士業が9割を占めているようです。

 家庭裁判所が選任した士業たちは、被後見人のことを知りません。にもかかわらず、そうした後見人は親より強い権利を有して被後見人を管理しています。

 

成年後見人がついていないと進まない制度

 では、成年後見人をつけなくてはいいのではないかということですが、残念ながら、今の日本において、後見人を付けなければならないことが多いのです。

 その一つが、相続です。相続人に意思判断能力がない場合、後見人を付けて遺産分割協議に参加してもらわなければなりません。

 もう一つは、預貯金の払戻しや不動産の売買です。本人の意思が確認とれないと、それを動かすことができないので、後見人を付けてくださいと言われます。

 問題はここからです。

 確かに本人の意思が確認とれない以上、代理人を立てる必要があるでしょう。

 しかし、ここで後見人を付けてしまうと、その後亡くなるまで後見人を付けなければならないのです。たった一度の行為の為であってもです。

そして、その後見人への高額な報酬額です。管理財産が1000万円以内であれば、月額2万円、管理財産が1000~5000万円であれば、月額3~4万円を後見人に払わなければなりません。払うというよりも、口座を後見人に管理されているので、勝手に取られているといったイメージでしょうか。

 

 

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