終活
第9回 行政書士
家族信託専門士
終活専門士 中家 好洋
今回のテーマは家族信託の実例1
今回は、2つの図をじっくりと見てください。
家族信託で、この「ケース1」が圧倒的に多く、7、8割はこのケースです。
上段の「一般の場合」というのは、何もしなかった場合のことです。
父親や母親が高齢者施設に入所しても、自宅をそのままにしておくというのは、一般的です。
意思判断能力があるうちは、いきなり自宅を売ってしまうというようなことは、しないと思います。売ってしまうということは、もう帰るところがないということですから。
しかし、親に意思判断能力が失われる状態になってしまった場合、子は売ることを考えるでしょう。
その時に、親の意思判断能力が喪失していれば、残念ながらもう自宅は売れません。意思判断能力のない者に自宅を売るという法律行為は出来ないからです。
対策
親の意思判断能力があるうちに、親が自分を委託者(財産を持つ者)・受益者(財産を管理してもらったことで利益を得る権利を持つ者)、自分の子を受託者(財産を管理・運営する者)として、管理を託す契約(家族信託契約)をしていれば、例え、親が認知症になってしまっても、管理を託された子が手続きをすれば、その自宅を処分・活用することが法律上できるのです。
今後中心的なケースとなっていくのではないかと思われているのが、現金資産のみを信託財産にした家族信託です。
何故ならば、不動産を信託財産にした場合、登記が必要となります。そして、その登記には手数料が発生します。信託登記の費用+委託者が亡くなった場合の登記の費用+信託が終了したときの登記費用が発生するのです。
たぶん、そこまでの費用が発生することをほとんどの家族信託専門士等はお客さま(委託者)に説明していないと思います。後から後から、費用がかかってくるというランニングコストが発生するのです。
対策
家族信託は、不動産もすべて信託財産に入れなければならないかというと、そうではありません。親と一緒に暮らしている者、親がある程度、預貯金を持っている者(人によっていくらかは、収入(年金等)と支出を比べてみないとわかりませんが、一般的には預貯金額が1000万円も必要ないと思われます)は、不動産を信託財産に入れる必要性はありません。
不動産がないと、シンプルに契約書を作成することが可能であるため、現金のみの家族信託という方法で安価な家族信託ができるのです。
この、家族信託に、不動産をプラスしたいのであれば、遺言書をプラスするという方法で付け足せば、それでも不動産を信託財産に入れた家族信託よりは安く解約することができるのです。